最終更新日:2024年10月24日
目次
2024年、世界のほかの通貨に比べて、日本円が大きく価値を損なう「円安」が進行しています。そこで、「円安の影響で留学は諦めるべき?」という疑問を抱いている方も多いでしょう。
日本で生活している限り、円安の進行は物価高などのマイナスの影響を及ばします。一方で、ワーキングホリデー制度を活用して、海外への「出稼ぎ留学」に行けば、日本で働いている以上の収入を手に入れることが可能です。
本記事では、日本が苦しんでいる円安の背景について紹介したうえで、円安が与える留学へのプラスの影響とマイナスの影響を解説します。また、円安の時代におすすめのワーキングホリデー制度のメリット・デメリット、おすすめの留学先、ワーホリに関するよくある質問について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
連日ニュースで取り上げられている「円安」の話題ですが、正しい意味を理解できていない方も多いでしょう。そこで、ここからは円安と円高についての基礎について解説したうえで、今日の円安が進行している背景について紹介します。
円安とは、日本の通貨である円の価値が他国の通貨に対して低くなることです。たとえば、世界の基軸通貨のドルと日本円の関係を見てみます。
2021年1月のレートは、1ドル=103円です。つまり、両替所で約100円を支払えば、1ドルと交換してくれていました。
一方で、2024年6月のレートは、1ドル=160円です。そのため、両替所で1ドルと交換するには、約160円支払わなくてはいけません。このように、直近3年半の間で円の価値が大きく下がっています。これが、円安が進行している状態です。
一方で、円高とは、日本の通貨である円の価値が他国の通貨に対して高くなることです。たとえば、1ドル=277円(1982年10月)から1ドル=82円(1995年4月)の場合、13年をかけて円の価値が3倍に高まってたことになります。
円安が進行している主な背景は、2021年以降の日本の金融政策や経済成長の差が挙げられます。為替相場はさまざまな要因によって上下しますが、近年は円安トレンドが顕著になってきています。
日本では、低金利政策と大規模な金融緩和を続けています。一方で、アメリカをはじめとする諸外国では、インフレを抑制するために金利を引き上げています。
たとえば、あなたが投資家で100万円投資したら毎年0.1%の利子がもらえる日本と、毎年5%の利子がもらえるアメリカのどちらに投資しますか?おそらくもらえる利子が多いアメリカに投資するでしょう。
このようにして、海外に投資資金が流れていった結果、日本円を欲しい人が減って円安が起こっていると言えます。
日本経済は、新興国や他の先進国に比べても成長が鈍化しています。理由は、少子高齢化や生産性の伸び悩みなどです。
「日本はたくさんの借金を抱えている」という言葉を聞いたことがありませんか?経済成長が鈍化している一方で、日本は巨額の財政赤字を抱えているため、日本が財政破綻することを懸念して日本円が売られています。
円安が与える留学へのプラスの影響は2つです。
1.留学先の最低賃金(円ベース)が上がる
2.日本人の留学経験の価値が高まる
円安が進行すると、留学先でアルバイトをした場合、日本円で換算したときの「時給」が膨らみます。たとえば、アメリカに留学して1時間15ドルのアルバイトをするとします。
1ドル=100円の世界では、1時間の労働で1500円を手に入れることが可能です。一方で、1ドル=160円の世界では、同じ1時間で2400円を稼げます。
日本にいる家族に送金したり、帰国後の資金として貯めたりする場合は、円安の方が有利です。
円安が進行すると、留学の初期費用が高くなるため、留学に行く日本人の数が減ります。一方で、日本企業はグローバルに活躍できる人材を今まで以上に欲しています。
そのため、海外での生活経験や語学力の高さは貴重です。留学を通じて得た知識や経験を、ライバルと差別化することで、就職活動や転職活動が有利になるでしょう。
円安が与える留学へのマイナスの影響は2つです。
1.留学先の授業料が膨らむ
2.留学の滞在費用が膨らむ
円安が進行すると、日本円に換算したときの留学先の授業料が膨らみます。たとえば、語学学校に3か月間通う場合の授業料について考えましょう。
国 | 現地通貨の相場 | 円高のとき(2021年) | 円安のとき(2024年) |
アメリカ | 3,000ドル | 約33万円 | 約45万円 |
カナダ | 3,500カナダドル | 約31万円 | 約39万円 |
オーストラリア | 4,000豪ドル | 約33万円 | 約38万円 |
直近の3年間でどの国も、日本円に換算したときの授業料が高くなっています。語学学校の授業料は、留学費用全体のうちの大部分を占める支出です。そのため、円安が与える留学への金銭的なマイナス影響は大きいと言えます。
円安が進行すると、授業料だけではなく滞在費用も膨らみます。具体的には、家賃や食費、交通費、観光料金などです。
たとえば、アメリカ留学をするときに必要な毎月の生活費は、1,000ドルと言われています。1,000ドルをすべて日本円で用意する場合、16万円(2024年6月)が必要です。
留学期間が長期になるにつれて、日本円で留学中の生活費を貯めるにはかなり高いハードルとなります。そのため、留学中の生活費はアルバイトやワーキングホリデー制度を活用して、留学先で稼ぐことをおすすめします。
ワーキングホリデー制度とは、日本人の若者が海外に滞在しながら、学業や就労を経験することができるビザ制度です。対象年齢は18歳から30歳(国によっては35歳)、滞在期間は1年間ですが国によっては延長ができます。
ワーキングホリデービザを取得すると、その国で働きながら生活費を賄いつつ、現地の文化や生活を体験することができます。円安の時代は留学中の生活費の用意がネックですが、ワーキングホリデーならその問題点を解消することが可能です。
メリット | デメリット |
・就労時間の制限が緩くフルタイムで働ける ・日常会話を通して語学力が高まる ・異国の文化や習慣に直接触れられる ・帰国後の就職活動でアピールできる ・休学・休職期間の合間に参加できる |
・アルバイトや短期の仕事が多い ・特定の業種や就労時間に制限がある場合もある ・日本でのキャリアを一時中断することになる |
カナダへのワーキングホリデーについては、こちらの専門ページを参考にしてください!
ワーキングホリデー(ワーホリ)に 行かれる方へ
円安の時代にワーキングホリデーに行くメリットは4つです。
1.外貨収入を「出稼ぎ留学」で稼げる
2.現地の生活費を効率化できる
3.自己投資につながる経験やスキルが身につく
4.日本よりも生活水準が高い
留学の目的は、世界中に友達を作るため、英語でのコミュニケーション能力を高めるためなど、人によってさまざまでしょう。一方で、円安の今の時代には、「出稼ぎ留学」がトレンドになっています。
「出稼ぎ留学」とは、日本円に比べて価値が高まっている外貨を、積極的に稼ぎに行くことを目的とした留学です。たとえば、オーストラリアでカフェのバリスタとして仕事をした場合、平均時給は約25豪ドル(約2,300円)です。(1豪ドル=92円、2024年7月)
日本でカフェのバリスタをしても1,000円~1,200円が相場であるため、同じ時間で同じ仕事をしたときに、オーストラリアのほうが2倍のペースで稼げることになります。このように、ワーキングホリデーは日本よりもたくさんの収入を稼げるというメリットがあります。
ワーキングホリデーをすることで、現地の生活費を効率化できるというメリットがあります。たとえば、カナダ留学の資金が100万円のとき、日本では時給1,000円の仕事を1,000時間(週40時間働いて6か月半)する必要があります。
一方で、カナダでは時給15カナダドル(約1,600円)の仕事を624時間(週40時間働いて4か月)で済ますことが可能です。
また、ワーキングホリデー加盟国の多くは日本に比べて税金や物価水準が低く、生活のコストがかからない傾向があります。このように、現地の生活費は効率よく現地で稼ぐことができるのが、ワーキングホリデーのメリットです。
ワーキングホリデーは単なる「出稼ぎ」ではなく、社会に通用する経験やスキルを積むための自己投資という側面があります。ワーキングホリデーを通して、英語でのコミュニケーションや異文化理解の能力、実務経験を身に着けることができます。
これらのスキルは、これからのキャリアにとても役に立つでしょう。ワーキングホリデーを通してグローバルな人材となることで、あなた自身の市場価値を高めることができます。
ワーキングホリデー加盟国には、日本よりも生活水準が高い国がたくさんあります。たとえば、オーストラリアやニュージーランドでは、高い賃金水準や豊かな自然、充実した社会福祉制度が整っています。
なかでも、カナダやオーストラリアでは、質の高い公的医療保険制度が整備されています。公的医療保険制度に加入することができれば、医療費の自己負担が少なくすることが可能です。
円安の時代にワーキングホリデーに行くデメリットは4つです。
1.初期費用の負担が大きい
2.物価上昇のリスクがある
3.為替変動のリスクがある
4.仕事が見つけられない可能性がある
ワーキングホリデーに参加するためには、ビザ申請費用、航空券、海外旅行保険、最初の滞在先の費用など、さまざまな初期費用がかかります。
これらの費用は、日本円ではなく外貨で決済するため、円安の時代には大きな負担です。円安が進行している期間のワーキングホリデーは、準備段階でのハードルが高まってしまうというデメリットがあります。
円安の時代にワーキングホリデーに行くデメリットとして、物価上昇リスクが挙げられます。IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)が公表したデータによれば、2023年の世界のインフレ率は6.78%です。
一方で、日本のインフレ率は直近30年間でほとんど横ばいです。そのため、ワーキングホリデーに行っているうちに、日用品や食料品、交通費など、生活に必要な支出が大きくなることがあります。日本円で留学資金のすべてを用意しようと考えている方は、ワーキングホリデーの滞在先の国の物価が上がるリスクを頭に入れておきましょう。
執筆参照:IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)|World Economic Outlook Database October April 2024 Edition
ワーキングホリデーは1年間の中長期留学です。2週間や3か月の短期留学と違い、将来の為替変動のリスクを理解しておく必要があります。たとえば、2024年7月時点では1ドル=160円です。今後は1ドル=200円まで円安が進行する可能性がある一方で、1ドル=120円と円高に振れる可能性もあります。
円安が進行すればするほど、ワーキングホリデーの初期費用をたくさん稼がなければいけません。また、ワーキングホリデー期間中に円高が進行すると、日本に帰国するタイミングで外貨の価値が下がってしまうことも考えられます。
為替レートはさまざまな要因で常に変動するものです。そのため、「円安を利用して外貨を稼ごう!」というよりも、「自分の経験のためのワーホリにしよう!」という心持でいることがおすすめです。
円安の影響でワーキングホリデーの人気が過熱すると、ワーホリ生を採用する求人募集が少なくなり、仕事が見つけられない可能性が出てきます。とくに、語学力が十分でない方は注意が必要です。
たとえば、オーストラリアの一部地域では、日本食レストランや日本人観光客など、必ずしも英語が必要ない仕事の求人がほぼ埋まっています。仕事の奪い合いに勝利するためには、レジュメ(履歴書)をしっかりと作りこんだり、直接店に出向いて応募したりという行動力が必要です。
円安の時代におすすめなワーキングホリデーの留学先を3か国紹介します。
1.カナダ
2.ニュージーランド
3.オーストラリア
カナダは、美しい自然と発展した都市が魅力の国です。郊外の地域では、ウィンタースポーツのインストラクターやホテルのスタッフなど、観光業界の求人がたくさんあります。また、都市部ではレストランやカフェのスタッフ、フードデリバリーの配達員など、サービス業界を中心にたくさんの求人が募集されています。
カナダの最低賃金は州により多少のばらつきがありますが、約17カナダドル(約1,950円)です。世界的にみても経済や通貨価値が安定しているため、「出稼ぎ留学」としても人気があります。
カナダのワーキングホリデーに人気の都市であるバンクーバーやトロントでは、医療や公共交通機関が発達していることが特徴です。高い生活水準の中で、安心安全なワーキングホリデーに参加したい方はカナダがおすすめです。
カナダのワーキングホリデーについては、こちらの専門ページをご覧ください!
ワーキングホリデー(ワーホリ)に 行かれる方へ
ニュージーランドは、手つかずの自然が残る、温暖な気候が人気の国です。ワーキングホリデー参加者は、農業や観光業界の仕事に従事する方がたくさんいらっしゃいます。また、秋はキウイフルーツの収穫のお手伝いをして、春にはリンゴやアプリコットの収穫を手伝うというように、季節によって働く場所と内容を変えられることで人気が集まっています。
2024年7月時点で、ニュージーランドの最低賃金は、23.15ニュージーランドドル(約2,082円)です。ニュージーランド人は、フレンドリーな性格の方が多く、社会にすぐ馴染むことができるでしょう。また、日本人オーナーが一定数いるため、初めての海外での仕事探しに抵抗を持っている方こそ、ニュージーランドはおすすめの国です。
オーストラリアは、発行枚数に制限が設けられていないため、ワーキングホリデービザが取得しやすい国です。また、最低賃金が高いため、円安の影響でたくさんの収入を得ることができます。
2024年7月時点のオーストラリアの最低賃金は、24.1豪ドル(約2,300円)です。都市部を中心に、サービス業や観光業、農業など、たくさんの求人があります。とくに、シドニーやメルボルンなどの都市は、日本人留学生の数も多いため、初めての海外の方でも安心して生活することができます。
温暖な気候と豊かな自然、多様な文化を求めている方は、オーストラリアのワーキングホリデーに参加してみてください。
ここからは、ワーキングホリデーに関するよくある質問について解説していきます。
ワーキングホリデーの初期費用を準備するときは、50万円から70万円を目標にしましょう。ただし、渡航する国や生活スタイルによっては、より多くの費用が必要になる場合があるため注意が必要です。
初期費用に当たるのは、ビザ申請費用や航空券代、初月の家賃や生活費などです。また、「仕事がなかなか決まらない!」「求人が少なくて語学学校に通うことにした!」というように、予期せぬ出費や緊急時のための予備費も考慮する必要があります。ワーキングホリデーのための資金計画をたてるときは、余裕を持つことを意識しましょう。
ワーキングホリデー期間中の国民年金は、手続きをすることで、支払いを免除することができます。手続きはこちらの手順に沿って行います。
注意点としては、国民年金の支払い免除期間は、将来受け取れる年金額に影響が出てくることです。定年を迎えてから受け取る年金額を少しでも減らしたくない方は、ワーキングホリデーの期間中も国民年金を納めることをおすすめします。
2024年7月時点で、ワーキングホリデーで日本人が一番稼げる国は、オーストラリアと言われています。理由は、オーストラリアの最低賃金が世界的にみても高いこと、多種多様な業種の仕事で求人があることの2つです。
先述の通り、オーストラリアの最低賃金は24.1豪ドル(約2,300円)と、日本に比べて2倍以上の違いがあります。また、観光客が押し寄せるシーズンには、ホテルやレストランでのリゾートバイトの求人がたくさん出てきます。短期間のリゾートバイトは最低賃金以上で効率よく稼ぐことができるでしょう。
ワーキングホリデーで渡航してから、すぐに仕事を探すことはおすすめできません。現地についてから1週間から2週間ほどは準備期間として考えましょう。
まずは、現地の生活に慣れることが大切です。また、住居や銀行口座の開設、税番号の取得などの手続きを済ませる必要があります。語学力に自信がない方は、最初の3か月ほどで語学学校に通うことも視野に入れましょう。希望する職種でスムーズに働き始めるためにも、1週間から2週間ほどの準備期間は重要です。
ワーキングホリデービザを取得するために英語力の条件はありませんが、仕事探しのときに英語力は大きな武器になります。そのため、TOEICで600点程度、IELTSで5.5以上を一つの目安にしましょう。
日常会話ができるほどのリスニング力、スピーキング力があれば、サービス業や観光業でお客様とのコミュニケーションや同僚との連携が可能です。ワーキングホリデーの渡航前に、ある程度の英語力をつけておくことで、より充実した留学経験ができるでしょう。
2024年以降は日本銀行の低金利政策や、日本経済の鈍化によって、世界的な円安が進行しています。円安が進行すると、これまで以上にたくさんの留学資金を用意することが必要です。一方で、円安が進行することによる海外留学のメリットもあります。
1.外貨収入を「出稼ぎ留学」で稼げる
2.現地の生活費を効率化できる
3.自己投資につながる経験やスキルが身につく
4.日本よりも生活水準が高い
ワーキングホリデー制度を活用することで、このようなメリットの恩恵を効率的に受けられます。ワーキングホリデー制度とは、18歳から30歳(国によっては35歳)の若者を対象とした、最長1年間(国によっては延長が可能)の留学制度です。
円安の時代こそ、ワーキングホリデー制度を活用して、外貨収入を増やしてみてはいかがでしょうか。
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野澤治子
NPO留学協会認定資格(NO62057)カナダ専門留学アドバイザー。
カナダ(トロント、バンクーバー)で4年滞在。
バンクーバで留学カウンセラーとして年間900人以上の留学生をサポートしてきました。
自分が留学した際に経験して感じたことや失敗談をなど自分のカナダでの留学経験を活かし「最初の1歩を踏み出す後押しができる」そんな「留学アドバイザー」でいれたらと思います。 特にカナダワーキングホリデーの中でも私は「ギリホリ」を経験者なので「キャリアアップ」につなげたい社会人の方応援します! また2人の子供がいるので私の経験を活かしお子様の英語教育から高校留学など少しでも英語や留学を身近に感じていただけるお手伝いをさせていただきます。気軽に相談下さい。